【アニメ評】<第1回>「かくしごと」久米田康治 原作

 アマゾンプライムとは、なかなか便利なものである。気が付いたらプライム会員にされていて「一体これはどうしたことか」と当時は思ったものだが、あえた退会をするほどのものでもなく、むしろ今となっては入ってよかったとさえ思っている。それは、無料(会費を払っているから厳密には無料ではないのだろうが)でけっこういろいろなアニメを見ることができるからだ。

 

kakushigoto-anime.com

 

 「かくしごと」は久米田康治の同名の漫画を原作とするアニメだ。久米田康治といえば、「勝手に改造」や「絶望先生」などいくつかの作品を愛読しているが、「かくしごと」に興味を持ったのは久米田作品だから、ではない。

 いつだったか、電車のなかで見かけた小さな広告。「かくしごと」というタイトルに、スーツを着た男性とそのスーツに縋るようにして歩く小学生の女の子。この絵に奇妙なほどに惹かれ、記憶に残っていた。社会人になってからというもの、めっきりアニメを見る機会が無くなってしまったからそれきり何をするでもなかったが、アマゾンプライムで番組を探している中に、スーツの男性と小学生の女の子の絵が出てきた。

 

 全12話。時間にするとおよそ5時間分。決して短くないはずの時間が、あっという間に過ぎ去って、終わってほしくない、という気持ちにさせられる。久米田作品らしくパロディやコメディも存分に楽しめる。(タイトルも他作品のパロディとなっているところに制作陣の作品に対する愛情を感じられる。)

 が、この作品には従来の久米田作品にはなかった切なさがある。作品の根底に親子の愛情や大人の苦悩といったヒューマニズムが流れている。扱っているのはやや重たく暗くなりがちなテーマだが、久米田氏の作風がちょうどいい塩梅にその重さを中和してくれる。観ている人に笑いも涙も与えてくれる、珠玉のアニメだ。これは漫画も読まざるを得ないという気にさせてくれるのは、メディアミックスとして大成功なのだろう。

 

 最後に「かくしごと」のオープニング映像のリンクを張り付けておく。なんとなく「君の名は。」を彷彿とさせるような気がするのは、気のせいだろうか。 

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